洋人と圭介

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「S市?なんで?」 俺は単純に疑問をなげかける。 S市は俺の住んでいるこの町のある県の県庁所在地で、一番栄えている市のことだ。 同じ県だけど、電車は2回乗り継いで3時間、車で高速道路を走っても3時間かかる結構な距離だ。 俺の疑問を無視するかの様に、圭ちゃんはムクを撫でていた手を止めて俺を見上げる。 「おめ、明後日は文化祭の代休だべ?ちょっと用足しさ行きてぇからさ。デートの約束してれば仕方ねぇけどっしゃ。」 圭ちゃんがニヤニヤとしながら、俺を見つめ続ける。 「デ、デートなんてする相手いないし!多分大丈夫だけど、漁の予定とか父ちゃんに聞いてみないと。」 そう返事をしながら、体温が上がっているのが自分でも分かっていたけど、その理由はわからなかった。 「ふーん。学校休みだから、てっきりデートの約束でもしてっかと思ってたけどなぁ。じゃあ、大丈夫だな。」 圭ちゃんはそう言うと、家の奥の方へと歩いていく。
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