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圭ちゃんにS市へ行く誘いを受けた当日。
約束の時間ぴったりに圭ちゃんは家へとやってきた。
いつもの圭ちゃんの職場の名前入りの配達用の軽ワゴンではなく、濃紺のSUVが家の坂を登って来た。
ムクは母ちゃんが散歩に連れて行っていて家にいなかったから、吠えられる事もなく玄関の前に車を停めると、玄関先で待っていた俺へと車から降りる事なく声をかける。
「お、おはよがす。さ、車さ乗らいん。S市さ行くぞ。」
圭ちゃんはイケメンスマイルで俺を車へと誘う。
圭ちゃんに言われて俺は助手席に乗り込み、坂を下って国道へと出るとS市方面へと走り出した。
今日も空は秋晴れで澄み切っていて、早朝の朝日が海面に反射してキラキラと輝いていた。
いつもはあの海面にいるから、それを地上から見るのはなんだか新鮮だった。
「洋人、ちゃんと免許証持って来たか?」
圭ちゃんが運転しながら、ずっと窓の外の景色を眺めていた俺へと声をかける。
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