時が過ぎても

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「桜が散る頃、桜の木の下(した)で待っている」 きれいな字で書かれた宛名のない差出人不明の手紙(ラブレター)を手に、私は校舎の裏にある大きな1本だけ空に向かって伸びる桜の木の下(もと)にたどり着いた。 そこにはまだ誰もいなく、サラサラと落ちていく桜の花びらだけが存在を主張していた。 桜の木に寄りかかって、なんとなしにボーと散っていく桜を見ながら思案する。 一体誰が、私の下駄箱に"間違えて"手紙を入れたのか気になって、指定場所に来てしまったけれど、間違いだったのかもしれない。 数分待っても誰もやってくる気配がなくて、そろそろ帰ろうかなと思ってきていた。 「わっ!な、なに?」 桜の幹から体を離した時、強い風が私と桜をなびき、大量の花びらと私の髪の毛が攫われた。 それからしばらくしてから、風はすぐに止んだ。 目元が髪の毛で覆われ、それを掻き分けて前を見据えると、目の前に和服を着た1人の男性が立っていた。 「やっと……逢えた……」 「え……?」 男性は長い髪を束ねたポニーテールを靡かせながら、私をギュッと抱きしめてきた。 困惑しながら、その男性を恐る恐る見上げると、慈悲に似た哀しさをたくわえた微笑みをしながら口を開く。 「私の……愛おしい人。……1000年間思い焦がれた願いが今この手に……」 「あっ…………」 意味のわからない言葉と共に、私の額に柔らかな口付けが落とされた瞬間、頭の中にスっと私じゃない別の誰かの記憶が頭になだれ込み、思い出したように私は彼の名前を口にした。 「将勝……さん」 「あぁ……私の名前を覚えていてくれたんだね。とても嬉しいよ……」 額と頬に唇を落とされ、懐かしさとくすぐったさに身を捩りながら、私は愛おしかった彼を抱きしめ返した。 「これから、私達は一緒だ……もう、君を手放したりしない……たとえ君に婚約者が出来ても」 「はい……私も、たとえ引き裂かれそうになっても、あなたの手を離したりしません……」 彼の体温を感じながら、私たちは1000年の時を超えて、これからの事に思いを馳せるのだったーー。 桜の木の下で、時を超えて再会を。 おわり
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