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「私、そろそろ子供が欲しいんだけど…」
彼女は少し恥ずかしそうにしながら言ってきた。
いつか言ってくるだろうとは思っていたが、実際に言われると返答に困る。しかし、私としても別に子どもが欲しくないわけではない。私が気にしているのは彼女が子供を育てることの大変さや、金銭面、それに自分の体の弱さについての懸念を理解した上で欲しいと言っているのかということだ。
「う~ん、そうだな……結婚してまだ2年だしもう少ししてからでもいいんじゃないかな? 俺も子供は欲しいけど正直、今の貯金で賄っていけるかあまり自信無いんだ」
私は彼女を傷付けないように言葉を選びながらそう答えた、体が弱いことについて触れるのは止めておいた。しかし彼女は口調を強くして言う
「私はもう2年も我慢してるのよ、それに相応の覚悟をもって言ったんだから。お金が無いならパートだって内職だってするわ」
私は一呼吸おいて、少し興奮気味の彼女にこたえる
「君がしっかり考えていてくれるのは分かっているんだけど、子育てはかなり大変だし、それに…あんまり体は丈夫な方じゃないだろ? そういうことも考えたのか?」
「ふざけないでよ」
彼女は涙目になりながら私を睨む。私は10秒前の自分を呪った。彼女は続ける
「そんな覚悟とっくにできてるわよ、2年間、私が何も悩まされず考えずにいたとでも思ってるの? 今日だってどれだけ言うのに葛藤があったか……」
言い終わると彼女は手の甲で涙を拭いた。そこまで考えてのことだったのか、なんか試したようで申し訳ない。能天気で後先を考えない彼女のことだから、軽い気持ちで言っているのでは……? と少し思ってしまったのだ。
実は無理をすれば子供を養えないことはない。それだけ私もこの2年間真面目に働き、節約してきた。彼女もしっかりと理解しているようだし、もういいかもしれないな。
「明日出掛けよう」
私はそっけない風を装って言う
「えっ…本当に?でもお金とか大丈夫なの?」
さっきまでの泣き顔はどこへ行ったのやら、彼女は笑顔でそう聞いてきた
「お金の心配はしなくていい。それより行くと決まったら色々相談しないとな、男の子か女の子かとか」
ちょっと話が早いかなと思いつつも私は言った
「私、女の子って前から決めてたんだ。ここだけは譲らないからね」
「ならよかった、俺も女の子がいいと思ってたし」
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