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「おにいちゃんお帰り。」弟の浩が声をかけた。弟は、高校出て一時東京の中野で僕の近くにいたが、今は帰ってきていて親父の仕事のまぐろの仲買いの仕事を手伝っている。下の弟は今も東京にいる。僕はバックとギターを置き、洗面所で顔を洗い台所に向かった。家族そろって食卓についた。「さあ、できたでー。おかわりあるからね。一杯たべなーよ。」「うん、いただきます」僕は、丼ぶりをぐわっとつかみ、まず一口とんかつをかじった。「うん、これや。これ。」口には、ださないが、心の中でつぶやいた。そして次からは勢いよく口の中にかきこむ。あっという間に食べつくし、2杯目。1杯目もかなりの大盛なのだが、軽く食べ終わる。今でも、いっぺんに牛丼の大盛2杯食べるくらいなんで。「アパートに東京から送った荷物全部とどいたあると思うよ。あとテレビとか適当にこうておいたあるさかい。何かいるものあったらまた、いいなさい。ふとんも置いたあるさか。」「うん、おおきによ。明日からちょっとずつ部屋整理し、合間に役場とか手続きにいってくるわ」「うん、そうしなあ。自転車も使いないやつ置いたあるさか。乗ったらええよ。」僕は久しぶりに母親の味というものを堪能した。「たけちゃん食べ終わったか。お父ちゃんに、アパートまで車でおくってもらいなぁ。荷物あるさかね。つかれたやろ。もう、風呂でも入ってはよ、寝なあよ。」「あんなぁ、俺もう30やで。中学生やないんやからなぁ。」「はいはい、やることは、中学生と変わらんやろー。じゃ、お父ちゃん頼むわ。」
僕は、お父ちゃんに送ってもらいアパートに着いた。一時は考え方の違いで勘当された僕だ。何も会話しなかった。ただ「おおきによ」だけ言った。お父ちゃんは「おう」とだけ言って戻っていった。それから、僕は風呂に入り、死ぬように眠りについた。
つづく。
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