なにか来る

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―――――― 「よし、じゃあ庭にセッティングしようか」 「うん」 「庭?」 てっきり居間あたりでバーベキューっぽいものが始まるものだと思っていた聖は首をかしげる。 「そう。せっかくだしねー」 コハクの言葉に庭の方を見ると、桜の木が見えた。 ついこの間まで枯れ木にしか見えなかった木に淡い温かみをイメージさせる桜の花が見事に咲き誇っていた。 その美しさに目を奪われて、つい昨日まで咲きそうにもなかったはずの桜が咲いているという違和感に聖は気づいていなかった。 誰が設置したのか照明も当てられていて、まさに夜桜を堪能できる空間がそこに広がっている。 そこにカスミとチトセがバーベキューコンロなどを出してきた。 「え?それは・・・・・・」 「前に倉庫で見つけてたんですよ」 「そうなんだ・・・・・・」 元々住んでいたわけではない聖がこの家のことをよく知らないのは当たり前だとすると、そんな聖よりも遅れてここで暮らしている彼らの方がこの家のことをよく知っているのはどう考えても不思議なことではあった。 「聖もこれ運んでー」 コハクが野菜の乗った大皿を聖の目の前に差し出す。 「あ、うん」 そう答えてふと縁側を見ると、いつの間にかミケがルリからえさをもらっていた。 これまでもコハクたちが自然とここに馴染むのは見てきた聖だが、ルリのそれは性質が違うような、あまりにさりげないように思えた。
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