なにか来る

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「はい、これも食べごろですよ」 「あ、ありがと」 「俺もー」 「カスミはお野菜も食べて」 チトセさんはせっせと肉を焼いては聖のお皿に乗せた。 カスミはせっせと肉を食べていた。 「ソースどっち使おうか?」 「両方入れちゃう?」 隣ではコハクとルリが焼きそばを作っていた。 ただただ広かったこの家に、何年も会っていなかった父親に頼まれて住み始めた聖。 最初は大人しいミケだけが近くにいたのに、いつの間にやらこんなにたくさん仲間できていた。 肉を頬張りながら、その仲間たちの様子を眺めて聖は思う。 『いくら子どもの時から動物たちの声を耳にしてたって言っても。どうもよく分からない不思議なことばっかりだ。でも、今が楽しいのは間違いないよな』 桜の下で楽しそうに笑っているみんなの顔は、桜の優しい色合いに負けないほどの優しさを湛えていることに改めて気付いて、聖は微笑んでいた。
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