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『コハクどう?』
カスミの声が、吹きぬける風のように彼らのなかで響いた。
『ここの桜が慌てて花開いたのは、近くの桜の不穏な気配を感じ取ったからだね。それは間違いないみたい』
コハクの声には散りゆく桜のような切迫感があった。
『チトセさんは?』
『そうですね、水の澱みがあちらの桜からこの桜にも伝わったのかもしれません』
チトセの声は水に氷が張るような緊張感があった。
『カスミは?』
『ここ数日あの神社の桜が霧にまとわりつかれているみたいだ』
『あの桜が咲こうとする力を利用しようとしているようだな、あの桜はかなりの年月を過ごしてきたようだから。チカラの糸口をつかんだんだろうな』
ルリの澄んだ声がみんなの意識をまとめた。
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