銀河をぎゅっと

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 一方で直子を失ったことは揺るぎない現実で今さらどうにもならない状況になった。嫌いになったり憎しみのなかで別れていればまだよかったのかとすら思う。失ったのは直子だけではない。直子関連の人間関係やそのネットワークに広がる俺の評判、信用といったものだ。直子にまつわる様々なことを同時に俺は失っている。それは追々実感していくことになるはずだ。これまで何度もそうだったように。歳を重ねるたび、ただただぼろぼろになっていくだけの生き物である俺。俺という生き物の現実の姿。  体が重く腰が玄関の上がり口に張りついたようだった。俺はひなたぼっこをする猫を羨ましく感じた。羨ましくもあり、でも猫として生まれていたらあの女には出会えていない。そう考えると俺は何と幸運なのだろう。はからずも猫と一緒の時間を過ごし、あの猫に救われた気がした。ようやく俺は靴の紐をゆるめて脱ぎ、重い腰を上げ、洗面所にいって手を洗い、台所にいって冷蔵庫を開けた。あれ?何のために開けたんだっけ? …ああ買い物のための確認か。そうだった。買い物に行かなければならない。夕方になり俺は歩いて近くのスーパーに行った。  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加