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「桜の木の下には屍体が埋まってるんだってさ!」
姉が楽しげに話していたのは、いつ頃だっただろうか。
当時の姉は、どうやら梶井基次郎の『桜の樹の下には』に心酔していたらしい。
「もしそれが本当なら警察が可哀想だな、大事件じゃないか」
私は反抗期だったのか、不愛想な返事をしていた。
「もう!どうしてそんなつれない態度なの?良いからちょっと聞いて、なぜ桜があんなにも綺麗に咲くのか──」
始まった。いくら不愛想な態度をとっても、こうなってしまった姉は止められない。
姉は感化されやすい性格で、読んだ本や見聞きしたもの全てに関心を示し、私やクラスメイトなどに熱心に話してまわっていた。
とはいっても、長々と説明する割に次の日には全く毛色の違う話題を持ってくるので、姉の話をしっかりと聞いていた人は居なかったらしいが。
しかしどうやら、今回は違ったらしい。
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