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理沙は視界の右隅に宙を動くものを見た。それが何かを確認するより先に銃口を向け、引き金を引く。相手の正体を確認する余裕などない。その一瞬の間が即、死につながる。
轟音とともに発射された弾丸代わりの石つぶては「敵」に命中。相手は地に落ちた。
理沙は、その残骸に慎重に近づく。
「人形、か…。」
僅かに原型をとどめている人形の上半身を理沙は見下ろす。その理沙に向かって、黒い塊が人形から飛び出した。理沙の額めがけて一直線に飛んでくる黒曜石を理沙は紙一重で避ける。それでも風圧で、額を浅く切られ、鮮血が飛ぶ。
先端の赤く染まった黒曜石は空中で反転し、再び理沙に襲いかかろうとした。
背後からの轟音とともに、黒曜石が砕け散った。
その背後には小柄な男が散弾銃を構えている。
「油断したな。理沙。」
「父さん…、ありがと。」
コスモミロスの鉱物は生きている。種類により差はあるものの、地球の動物同様、中には人間に匹敵する知能を備える種も存在する。
だが、それが分かった時には手遅れだった。
地球と同じ鉱物と見誤った多くの地球人の乱獲により、コスモミロスの鉱物達、なかんずく高い知能を有する黒曜石の一族は地球人を敵対種族と認識。猛反撃を開始した。
圧倒的な数の差に加え、地球側にはコスモミロスの鉱物に対する知識が絶対的に不足していた。
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