アンドロイド・リリィ

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店長「そこが珍しいんだ。家にある家具家電ぜーんぶ平成時代のモノで揃えて、俺からしてみたら店のモノが売れて嬉しい限りの商売繁盛なんだけど」 亮汰「だけど?」 店長「いや、特に深い意味は無いんだ。少し、気になってね。」 亮汰「なるほど・・・・・・強いて言うなら」 店長「強いて言うなら?」 亮汰「今の人達と大して変わらないですね」 店長「ん?」 亮汰「『自分の身の回りを機械で埋め尽くすことで、より自分という個性を強める』みたいな感じ」 店長「そんなものか・・・・・あっ、そうだ思い出した」 亮汰「何を?」 店長「ちょっとこっちに来い。珍しいモン見せてやるよ。」 亮汰「え?」 【SE】・足音 店長「これなんだけど、昨日友人から引き取ってくれって頼まれてさ。」 亮汰「これって・・・・」 店長「あぁ、アンドロイドだ。」 亮汰「かなり古いな」 店長「恐らくだが、平成の終わりごろに造られたモンだろう。」 亮汰「平成の終わり頃か・・・」 店長「製品名は『リリィ』、用途は家事手伝い全般と今のアンドロイドと大差ない。問題があるとすれば」 亮汰「平成に作られたってことか」 店長「あぁ、値段は約三万。大体の説明としてはこんな感じだけど」 亮汰「質問いいっすか。」 店長「なんだ?」 亮汰「その友人はこの『リリィ』をどこで手に入れたんでしょうね」 店長「さぁ・・・よく分からないが、こんな時代だ。古いものが捨てられていくのは当然のことさ」 亮汰「『リリィ』か・・・・・・・よし、決めた!俺、こいつ連れていきます。」 店長「そー言うと思ったよ。別に買うのは構わないが、どーするつもりだ?かなりリスクが伴うぞ?」 亮汰「分かってます。まぁ何とかなりますよ。」 店長「言っても聞かなそうだしな・・・了解、手続きしとくよ。」 亮汰「サンキュー」 店長「おう、お買い上げありがとうございます。」 亮汰「こうして、リリィがうちに来ることになった。」 シーン2 リリィ「起動を確認。本日の日時、六月二十日、日曜日、亮汰、おはようございます」 亮汰「あぁ、おはよう」 リリィ「亮汰、オーダーはございますか?」 亮汰「そうだな。」 亮汰 俺がこの家で最初にリリィにした命令。それは・・・・『俺の命令に従う必要はない、出来るだけ自らの意志で行動してくれ。』ということだった。
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