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辺りを見渡すとそこは砂漠とその砂漠に埋もれた荒廃したビル群しかなく、そのような光景を見ながらガタガタと振動する不安定な道を車で走っていくと、風に運ばれた子石が時折窓にぶつかるのを見て来賀は顔を顰めた。
「鬱陶しいなぁ……」
手に持ったハンドルを切って、小石の当たらないルートを探す来賀。だがルートを探している最中、来賀は遠目で異形な生き物が動いているのが見えた。
「チッ、界蟲がいやがったか」
外見は巨大な蟻。だがその体を構成する物質は蟻のような生物的な肌ではなく、凡そ生物的とは言えない金属と鉱石と土が入り混じった体を構成していた。
荒廃したビルの瓦礫を食べているその界蟲は来賀が運転している車のエンジン音に気付き、その無機物的な顔を上げて来賀の車を見つける。
「……やべぇ」
頬を引き攣りながら呟く来賀に、界蟲は先ほど食べていた廃ビルの瓦礫を捨てて勢いよく来賀のいる車へと走って来る。来賀は急いでハンドルを切って界蟲から逃げるように車を右折しながら、ふと周囲の光景を見て確認するように呟いた。
「ここは……比較的廃ビルが多いな」
ならば行けるかもしれないと思い、速度を上げるためにアクセルを深く踏み込む。その際車に取り付けてある補助ミラーでこちらを追って来る界蟲の存在を確認し、来賀は無意識の内に舌舐めずりをする。
「来なければ良かったと、後悔させてやるよ!」
本来ならばあの様な界蟲を相手にするのには専用の兵器、戦車に手足をくっ付けたかのような外見のロボット『バグレイヤー』が必要だ。
だが来賀はそのバグレイヤーを持っていないため、今運転している車一両のみであの界蟲から逃げなければならない。
「さぁ来い! 容易く食われるほど柔な人間じゃないぞォ!」
ハンドルを切り、崩れたビルとビルの間を縫うように走る来賀。
その間来賀の車を追って来る蟻型の界蟲は廃ビルにその体をぶつけながら悲鳴を上げているも、それでもなお諦めずに来賀を追って来る。
「だがまぁ、その習性が命取りになるんだがな」
そう呟いたその瞬間、界蟲がぶつかった衝撃によって廃ビルに亀裂が入り、巨大な瓦礫が上から大量に落ちてきたのだ。
「お、っとぉ!?」
このままではあの瓦礫の潰されるのは明白。だが来賀はハンドルやアクセル、そしてブレーキを巧みに操り落ちて来る瓦礫を掻い潜る。
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