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俺は猫である。名前はトラ。
どこで生まれたかは見当もつかないが、とても寒かった事は覚えている。
などと考えているとトタトタという足音とともに女が起きてきた。
「おはよートラ、今日も可愛いねー」
そう言いながら女はこちらを撫でようとしてくる。おい、乱雑に撫でるんじゃない。
こいつは俺の付き人である。いつも何とも騒がしくトロい奴だ。だがしかしこのトラと言う名はこいつが付けたらしい。
気高く美しい虎と同じ音を冠する名を付けるとは、恐らく三日三晩考え抜いた上でであろうがそこだけはほめてやっても良いだろう。
「あ、早く準備しなきゃ。」
そう言ってひとしきり俺を撫でた後、トタトタと慌ただしく何をしているのか動いている。
これが俺がむかえるいつもの朝である。奴も落ち着いて動けば俺の名付けの時の様なセンスを発揮するであろうに。
「じゃあトラ、行ってきまーす。」
「にゃあ」
奴も行った事だし俺も一眠りしよう。
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