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翌朝目を覚ますと、GBは既に畦のロッキンチェアーに座り、充電を開始していた。この調子でいけば、午後から畑を耕すことができそうだ。 農協から渡される野菜の種や苗を、一緒に添付された計画表通りに、撒いたり植えつけたりしなければならない。 そして、ここで栽培し収穫した野菜は、都市に出荷するよう、政策として定められている。要するに、ほとんどの農作物は、都市に住む人間の胃袋を満たすために栽培されているといっても過言ではない。 しかしもし、自分の食料を確保したいのであれば、大量に栽培し、予定量さえ納付してしまえば、それ以外に余剰をもつことは許可されている。しかしそのためには、多くの畑を開墾することが必要になる。それを可能にしてくれるのがGBというわけだ。 国有地の提供、アンドロイドの払い下げ、完全食の給付、という、強引ともとれる三本柱の政策で、食料自給率の底上げと農業従事者の育成、獲得に望んだ政府の、付け焼き刃のような政策は、俺のような暮らしぶりを好む人間には好都合だった。そして旧郊外地区には他にも多数いるらしい。そのほとんどが、完全食の給付に釣られてきた人間ばかりだが。 そういった意味では、政策は辛くも成功したといってもいい。けれど、実際の総収穫量は、予想していた収穫量の30%未満にとどまっていた。 それは、天候不順や地質上の問題或いは汚染、害虫や害獣による被害、そしてなにより農業従事者の怠慢にもあった。これでは、一度は衰退した国内自給率を上昇させるどころか、外交の面で、他国に弱みとしてつけこまれやすい、輸入一辺倒の食料事情からの脱却など夢のまた夢だ。 戦後、各地の都市部に人が流入し、一気に人口が倍近くまで増加した各都市のすきっ腹を満たすには、高齢化と過疎化による人材不足で財政が逼迫している地方での、従来の農法では限界があった。 そこで近年、ようやく第一次産業革命に向け、農産テクノロジーの開発は始まったばかりだ。ゆくゆくは全天候型農業システムを目指す、国家プロジェクトがたちあがると、まことしやかに噂されている。 その最初のステップとして、俺とGBのような、新たな農業従事者の雇用の創出と、人材育成プログラムの開発、及び都市部を取り巻くようにしてつくられる都市郊外農地の開拓が急務となっているらしい。 いまのところ、俺やGBは、そんなことを意識してくらしているわけではないのだが。
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