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郵便夫が去り、GBがその封筒をもってやって来た。
『郵便です』
GBは封筒を俺に手渡し、畑へ戻っていった。
「めずらしいな」
いまどき手紙なんて風流だ。しかし安全だ。電子便は、どこで誰に盗み見られているかわからない。だからいまや、どこで誰に盗み見られてもいいような情報のみがやりとりされている。
そして、手紙がきたということは、それだけ重要な情報がきたということになる。しかし、思いあたるふしなど微塵もない。
(なんだろうか?)
封筒に差出人の名はなかった。
封を切り、手紙をとりだした。朱塗りの手紙だった。ひらくとそこには、真っ黒な毛筆体でこう書かれていた。
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【臨時召集令状】
わが同胞に告ぐ
我々が移住して久しいこの惑星を『空ける球』などと揶揄し、蔑み、貶める、地球の逆賊らと、再びあいまみえるため、ここに軍力を結集せん
よって、貴重なる二足歩行兵としてわが部隊に編入すべく、東部旧郊外地区に配属中の2045機すべてのアンドロイドの召集を命ず
これ拒むことならん、万が一拒むことあらば、軍が強制回収に赴き、同時に厳重な処罰を課す
わが同胞よ、わが精鋭軍となり
地球奪還を共に宣誓すべし
以上
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「なんだこれ?」
俺は思わずGBを見た。
青空の下、広大な畑の真ん中で、必死に耕すGBを見た。
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