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落ち着いて読み返した。 (召集令状?アンドロイド回収?なんのことだ?) 読めば読むほどのみこめないような気がしてゆく。 (強制回収?厳重な処罰?GBが……俺がか?) GBはざくん、ざくん、ざきんと、変わらないリズムで、鍬を上げ下げしている。そのむこうの雑木林には、ひとあしはやく影がおちている。カラスがちらほら、塒へ帰ってきている。 俺はこの手紙の内容を、GBに告げるべきか悩んだ。しかし、届いたこと自体に興味や関心を示していないのに、手紙の内容にまでGBが自発的に (知りたがるはずがないだろうし、だったらわざわざ教えることもないだろう) と考え、GBにはなにもいわないことにした。俺のほうからいわないかぎりは、GBも知らずにいれる。俺は目をつぶり、ドラム缶の中に手紙と封筒を投げ入れ、ぜんぶなかったことにした。 気づけばGBの開墾作業は、雑木林と耕地の境界付近まで達していた。 (半日でずいぶんと耕したな……) 俺は盛り上ってふかふかとした土の感触を感じながら、GBへ向かって歩いた。 俺に気づいたGBは、上体を起こし、サーチライトをパッと点灯させ、俺の足元を煌々と照らした。 「いい!いい!見えてるからいい!消せ!充電がなくなっちまうだろ!」 と慌てていった。 不十分な充電で半日もフル稼働したから、電力消費は著しい。今ここで充電が尽きてしまったら、こんなに重たいGBを牽きずって帰らなければならない。それだけは避けたい。 『はいわかりました』 といい、パッと消した。 するとちょうどカラスがひとこえ、クワァァと鳴き、日がおち、あたりが静まり返った。 「さあ、もう帰ろう。たくさん耕したから汚れてるな。また洗わなきゃな」 『はいすいません汚してしまって』 と、カクンとGBは頷いた。 「いや、いいんだGB、それがおまえの作業だしな。まあ、昨日洗ったばかりだから、そんなに大変ではないだろうしな」 『はいありがとうございます』 「さあ、帰ろう」 『はい』 俺はGBと歩きながら、洗浄剤と潤滑油の残量を気にしていた。そして、電源をオフにしたGBを、運搬する方法を考えていた。けれど対格差や重量差を比較してみると (やっぱり担ぐのは無理だな……) という結論に改めて至った。そしてもしものときのためにも、GBを運搬するための荷車を手に入れるため、できるだけはやく市場へと探しにいくことにした。
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