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「なんだこれは?人間の……子供?」
衣服は様々だが、同じぐらいの背格好で、同じ顔だちの子供達が突っ立っている。そしてなぜか
(見たことのある顔だな……)
と気になり、まじまじと見ていると与田がいった。
「見覚えがあるだろう?よく思い出せ。記録がされているはずだ。思い出そうとすれば、必ず完璧に思い出せる」
俺は、この子供達をいつどこで見たのかを思い出そうとした。すると突然、目の前の景色に重なるようにして、凄まじい数の半透明の映像が高速で流れ始めた。
「な、な、なんなんだ、これは!?」
俺は驚きのあまりしりもちをついた。
映像を見ると映像に、与田を見ると与田に、照準が合ったほうの映像に合わせて、色彩の濃淡が切り替わった。
そして流れ続ける映像の中から、何枚かの静止画像がピックアップされ、ピタリと停止した。
それら画像のどれもに、子供達の顔が写っている。けれどどうも様子が変だ。なぜなら、子供達の顔が写っている画像のすべての場所は、俺の生活圏ばかりだからだ。
市場の窓ガラスや、テヒタじいさんの店にずっと置いてある古時計の盤面。畦の水溜まり。食事用の銀の器。そして、メンテナンスを終えた後の、ピカピカになったGBの胸部……。
「こ、これは、この顔は、お、俺なのか?……こ、この子供が?……」
地面にへたりこんだまま、与田を見上げると画像は消えた。与田は
「やっとわかったか!自分が!」
そして続けていった。
「おまえはな《STFシリーズ》という軍用アンドロイドだ。いまから俺の部隊への所属を命ずる!」
と声高に俺に命じた。俺は混乱した。
「う、嘘だ!!!」
与田はあくまでも冷静に
「嘘ではない。おまえは俺の手足になるのだ!」
と腕組みをし、威厳をみせつけた。
「……嘘だ!!……デタラメだ!!!」
俺は後ろ手にされたまま、脚力だけで跳ね馬のように立ち上がり、そのまま与田にとびかかった。
しかし、俺の真後ろに控えていたポテロに右脇腹を蹴られ、真横にふき飛ばされた。地面に叩きつけられた俺に、ポテロは馬乗りになり、そのまま高圧電流を撃ちこんだ。
「!!!」
全身にガツンとした衝撃がはしり、声もでなくなった。目の前が真っ暗になってゆく、ブレイクダウンする寸前、与田がポテロにいった
「コイツは使えんかもな……」
が、俺が聞いた最後の言葉となった。が、記録したかどうかは定かではない。
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