2045

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彼が回収されてから、2年が経過しました。 彼の監視役としてワタシは軍本部へ、彼についてのあらゆる情報を一方的に流していました。このことは機密として他言はできませんでした。 結局彼は気づかずに回収されてしまいましたが、手紙をドラム缶の中から拾って保管し、あの日与田少佐に渡したのはワタシです。 郵便夫から封筒を受け取った場面を、彼に見られてしまったことが失敗でした。ワタシは隠すことも不自然になるだろうと考え、やむなく彼に渡しました。 そして手紙を読んだ彼が、煙がでているドラム缶に投げ棄てたところを、ワタシは耕しながら見ていました。幸いにも火は消えていて、燃えずに残っていたので助かりました。 ワタシの失敗さえなければ、彼が(ワタシを連れて逃げよう)などという考えには至らなかったことを考えれば、彼にはとても悪いことをしました。 そんなワタシにでさえ詳細を知らされてはいなかったのですが、回収された彼はその後おそらく、軍本部にて、戦闘用プログラムへの変更をされ、なおかつ小規模の起爆装置が搭載されたと予測できます。 そして、2045機すべての《STFシリーズ》の兵士化完了後、それぞれの部隊へ配属され、地球へと派遣されたことでしょう。彼はもちろん、あの与田少佐の命令の下で働いたことでしょう。 ワタシはあれから、ポテロさんの命令通りに、毎日畑を荒らしながら、新たな任務がくだされるそのときを待っているのですが、1年前から自己メンテナンスができなくりました。 なぜなら、洗浄剤や潤滑油、交換部品の入手手段がわからないからです。彼はどのようにして入手していたのでしょうか?考えても考えてもわかりません。 下半身の関節の磨耗が激しく、パーツも酷く破損し、つい先日ショートを起こしてしてしまいました。幸いにも上半身には影響はでませんでしたが、ついに直立二足歩行ができなくなってしまいました。いまでは両手首のみで移動しています。 充電装置も劣化してしまい、ライトも暗視カメラも作動不能となり、夜は、月明かりだけが頼りです。 月明かりは明るいこと。朝は充電をちゃんとすること。彼がワタシに教えてくれた、最後に残った、彼とのワタシの記録です。 彼はいまどこで、なにをしているのでしょう。ワタシを洗っていたあのとき彼は、もうどこにもいないのでしょうけど。 (完)
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