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「おーいGBただいま」 ちょうど耕し終わったところだったらしく、鍬を持ってGBがやってきた。 『おかえりなさい』 泥んこ遊びをしてきた子供のように汚れている。特に関節部に土が入り込んでいるようだ。 「洗浄剤と潤滑油を買ってきたから、あとで洗ってやるよ、その前に土をちゃんと落としてこい」 『わかりましたおねがいします』 GBはそういって、カクンと頷き、水場へ向かった。 GBは疲労することはないが、接触不良や破損などで、動作が正常でなくなることはある。金属疲労をおこし、ヒビが入ったり欠けたりすれば、パーツそのものを交換しなくてはならなくなる。 部品交換ぐらいなら、テヒタじいさんに教えてもらっているから自分でできるが、パーツ交換となるとそうもいかない。オーバーホールにも金がかかる。 GBは旧式だから、製造中止になったパーツは手に入らなくなる可能性がある。稀少なパーツは値が張るうえに、足元をみられやすい。完全食程度では取り引きの対象にはならない。 特に脚部破損は、サラブレッドと同じくらい致命的な破損になる。だからこそ故障を未然に防ぐためにも、日々のメンテナンスは最重要作業になる。 日がとっぷりと沈み、サーチライトを点灯させたGBが戻ってきた。歩行状態に異常はなさそうだ。 「消せ消せ!充電がもったいない!」 俺が慌てていうと 『すいませんわかりました』 そういってGBは、パッと消した。 部屋のなかが真っ暗になった。外のほうがよっぽど明るかった。 「GB、洗浄は明日の朝一にして、月でもみようか」 『はい』 畦までいき、ロッキンチェアーにGBを座らせ、俺はその隣にビールケースを並べて座った。 「明日も晴れそうだな」 『明日の天気予報を検索しますか?』 「いや、いいよ」 『わかりました』 どこかから蛙の鳴き声が聞こえてきた。するとGBが 『この鳴き声は過去にアメリカ合衆国から食用として輸入されたウシガエルですね養殖場から逃げ出したものが繁殖し各地へ分布したそうです在来種の蛙を駆逐してしまうため現在では侵略的外来種に指定されているそうです』 「へえ、食えるんだ?」 『はいワタシは食べれませんが』 「俺だって食べれないよ」 『おなじですね』 「おなじだな」 『はい』 俺とGBは、それからしばらくの間、月夜をながめていた。
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