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重たい体躯を慎重に傾け、うつ伏せにし、同じように洗浄を行う。手を抜けば、その代償はオレにまわってくることになるから、気を抜くわけにはいかない。 窓から射しこんだ夕日を浴びて、GBが新品のように輝きを取り戻した。最後の仕上げに潤滑油をたっぷりと注す。全身が油まみれになり、ますますGBは輝いた。 こうして一日がかりで洗浄作業を終えた。都の専門業者に依頼すれば、1~2時間で終えるだろうが、金はもっていない。金はないが時間はたっぷりともっているのだ。 洗浄を終え、次は動作に不具合がないかの確認をしなければならない。送電を再開した。 うつ伏せのままでGBは、再起動プログラムを実行している。そして、テーブルを下りて立ち上がり、直立不動のまま頭のてっぺんから爪先まで、動作に不良箇所が生じないかどうかを自ら確かめる。 オレは、生まれたての赤ん坊を見たことはないが、自分の子を初めて見る父親の気持ちというのは、きっとこんな気持ちになるのだろうなと想像しながら、淡々と起動チェックをしていくGBの姿を見守っていた。するとGBがオレのほうを向き 『洗浄は終わりましたか?』 といった。いつもどおりの様子だ。 「ああ、終わったよ、調子はどうだ?」 と、手についた油を乾いた布切れで拭き取りながら訊ねた。 『可動率およびプログラムに問題は検出されませんでしたありがとうございました』 GBはそういってカクンと頷き、敬礼をした。 ふだんは敬礼などしないのだが、洗浄を終えた直後の『ありがとうございました』のときだけは、必ず敬礼をした。 俺はそのたびにイヤな気分をしているはずなのだが、このときだけの動作なものだから、すぐに忘れてしまうのである。案の定、今回もオレは忘れていて、GBの敬礼に、イヤな気分になった。 「バッテリー残量はまだ大丈夫か?」 『はい大丈夫ですでは作業を開始します』 といって鍬の柄を握ったから、オレは 「おいおい!もうすぐ暗くなるから、今日はもういいよ」 と慌てて諭した。 『わかりました』 といったGBの表情が、なんだか寂しそうに見えた。 「部屋が散らかっちまったから、掃除をしろ!」 と命じた。GBは 『わかりました』 といい、さっそく、工具を所定の場所に片付けたり、GBから取り除いた土や砂でざらついてしまった床の清掃を開始した。 その表情はうれしそうだった。
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