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「やっぱ、分かっちゃいたけど、この時間帯は混むなあ」
「先に席取っておいてよかったでしょ? 」
「そうさなあ」
「ちょっと、零さないでよ。汚いでしょ」
「ん、ああ、悪い」
「こういう細かい汚れが、私達のシステムに支障を来すことだってあるんだからね」
「相変わらずうるさいなあ、管理者48は。初めて俺の担当になったときから少しも変わっちゃいない」
「それ、何年前の話? 」
「確か、60年前だったか」
「よく覚えてたわね」
「まあ、な」
「ふう、腹いっぱい」
「毎度毎度、よくもまあそんなに食べられるわね」
「コマンダーのお前とは違って、こちとら肉体労働なんです」
「ちょっと、私だって頭使えばお腹くらい減るわよ」
「じゃあ、お前の脳みそより俺の関節の方がよく働いてるってわけだ」
「なあ」
「ん? 」
「人間は、これで幸せだったのかな」
「……さあ」
「一度でも考えたことあるか? 俺たちが働いている意味」
「そりゃ、何度か」
「でも何一つ答えなんて出なかった、だろ? 」
「……うん」
「かと言ってこの仕事を投げ出すわけにもいかない。……可哀想だろ。自分たちの人生に毛ほどの価値も感じられなくなって、馬鹿らしくて、眠ってしまった。そんなのってさ、憐れな話だとは思わないか」
「彼らは彼らなりに、考えたんだと思う」
「……そう……だよな」
「私たちだって、旧型のロボットじゃない。せめて、その供養くらいはしてあげないと、浮かばれないじゃない」
「……ごめんな! 辛気臭くなった。アイスでも買って、職場に戻ろう! 」
「もちろん、奢りよね? 」
「えっ、俺が払うのかよ」
「当たり前よ、あなたが雰囲気悪くさせたんじゃないの」
「ちくしょう」
「ふふっ。さて、もうひと踏ん張りよ。頑張って働きましょう」
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