魔法実習

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元軍人のベックマンはリアリストだ。 でないと戦場では生き残れない。 相手が怪物である可能性が少しでも有るなら警戒を怠ってはいけない。 いや、馬鹿な。 アリシア・アルバは敵ではなく教え子、つまり味方の筈だ。 だが、軍もアルバを警戒している。 いや、味方になるよう魔法学校に送り込んだか。 いずれにせよ、牙を隠した怪物かもしれない相手をわざわざ敵にすることはない。 融和的に行こうとベックマンは思った。 魔法実習ではウォームアップを兼ねて、毎回易しい魔法から難易度の高い魔法へと進んでいく。 魔法の低い者、その属性と適合性が低い者は難易度が上がって来ると対応出来なくなってドロップアウトする。 その場合、練習場の隅の安全な所から同級生が派手な魔法を行使するのを眺めている事になる。 これを魔法学校では俗に壁の花と言う。 火魔法、 風魔法の実習では、ベンヤミン・アクスとアリシア・アルバは壁の花仲間だ。 もっとも、その日まで話した事は一度も無かった。 アリシア・アルバの両親はアレマ人だと言う話だが、彼女の身体的特徴はマウハリ人のものだからだ。 マウハリ人は今から600年前まで今の大森林の辺りにマウハリ王国を形成していた。     
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