誘惑

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誘惑

アリシア・アルバは考えた。 ベンヤミン・アクスは思った以上に強力だ。 この魔法学校で見つけた、今のところ唯一の有望株。 是非とも、味方に引き入れたい。 アリシアの見たところ、ベンヤミンは内気で劣等感が強いが人種的偏見は少ないらしい。 理想的だ。 焦ってはいけない。 すこしずつ親しくなって心を開いたら再度やってみよう。 その後アリシアは実習で壁の花になるたびにベンヤミンと話をした。 最初は天気の話から、学食の料理の事、先生や同級生の話へ進んだ。 今ではファーストネームで呼び合うのも普通になった。 「ベンヤミンは兄弟はいる?」 「兄貴と妹が一人。」 「私には腹違いの弟がいるわ。 いえ、いるはず。 でも会ったこと無いのよ。」 「私の両親は両方ともアレマ人だけど、私こんなのでしょ。 父は自分の子じゃないって母を詰ったらしいわ。 母が病気で亡くなると私は家から追い出された。 その後父は別の女の人と再婚したそうよ。 男の子が生まれたらしいわ。 今の義父が私を養子にするために父と会った時、そう聞いたって。」 アリシアはベンヤミンをじっと見た。 ベンヤミンはアリシアがとてもかわいそうに思えた。     
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