友情

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友情

 貸したノートが急遽必要になり、慌てて返してもらいに行った友達のアパートはゴミ屋敷寸前だった。  部屋中に物が散乱していて、足の踏み場もないというのはこのことだ。  でも部屋はこんな有り様なのに、貸したノートはむろん、他にも以前貸したままになっていた本などは、探すこともなくすぐ返してもらえる状態だった。  そういえばこいつ、外ではむしろ几帳面だしな。たまたま多忙でろくに掃除もできない、とかいう状態だったんだろうか。 「なぁ。部屋ン中すげーけど、何か探した直後とか、忙しくて掃除できなかったとかか?」 「あぁ、まぁ、そんなカンジ?」  俺の質問に友達が答える。それにやっばりかと思いながら、俺はちょっとした手伝いのつもりで、足元に放置されている雑誌をテーブルの上に置いた。  その瞬間。  キャハハハハハハハハハハハハ!  どこからともなく甲高い笑い声が響き、俺は仰天して周囲を眺め回した。 「おい。今の声…」 「大丈夫。もう聞こえることはないから」  そう返事をした友達は、さっき俺がテーブルに置いた雑誌を、元の通り床に戻していた。  その行動でピンときた。もしかしてこの部屋は…。 「ちょっと前までは何ともなかったんだ。でもこの半月くらいでさっきの声か聞こえるようになって…」
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