人格統合のパラドックス

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その時小さな揺れと共に、 室内の電灯が一斉に点滅して消えた。 その瞬間彼女の姿が消えて見え、 代わりにその闇の中に小さな少女がこちらを(うかが)(たたず)んでいる姿が見えた気がした。 すぐに復旧した室内にはファナが普通に立っていた。 錯覚だったのか? 彼女は気にした風もなく話を続けた。 『あっいえあります。  簡易(かんい)のジャグジーがあります。  、その・・・  』 彼女はそこまで言って再び顔を赤らめ (うつむ)いてしまった。 上ずった声で動揺(どうよう)を隠す様に彼女は、 俯いたまま話す。 『あのシーカーさんに案内して頂いてもらいます』 自分の声にさらに動揺する彼女。 『あっは、  シーカーさんお願いして頂いて、  案内お願いよろしくお願いします」 動揺はさらに加速を増していた。 (すで)に彼女の言語中枢(ちゅうすう)は崩壊している様だったが、それでも優秀なシーカーはその意味を把握(はあく)した様に目を点灯させ、ピッピッピッピッと音声を発して、 進み始めた。 「じゃあ行って来るよファナ」 俺はそう言って彼女に手を振る。 『イッて来る?  あっ!はい。行ってらっしゃいませ』 彼女は顔を赤くしたままこちらを見送ってくれた。 俺はシーカーに案内されながら、 顔を赤らめたファナを思い出していた。 以前は気づかなかったが、 なんか可愛くなっている気がした。 今まで緊張の連続で、 彼女の本来の魅力に(ふた)をしていたんだと感じた。 彼女は薄い金髪碧眼(へきがん)で、 どこか異国の美女と言った風合いがある。 それに子犬の愛らしさが加わったような、 独特の魅力をかもし出していた。 高嶺(たかね)の花と言う言葉が似合う女性。 あんな事がなければ間違いなく、 俺の手の届く場所にはいないだろう人だった。          ―124―
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