アクアリュームの亡霊

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  廊下に出た途端(とたん)異変(いへん)を感じた。 廊下の照明も(いま)だに復旧はしていなかった。 まだ地震の影響で停電しているのか、 脱衣所から()れた光と非常灯の赤色だけが、 怪しく廊下を照し出していた。 そして何より異質(いしつ)異様(いよう)だったのは、 廊下の壁のあちらこちらがひび割れ、 ()ちていた事だった。 先程(さきほど)までは未来的ラボと言った感じだったのだが、 今は見る影もない。 俺は慌てて脱衣所に戻ると浴室を見た。 スモークガラス()しに見える浴室の中は、 明かりが消え闇に閉ざされていた。 そんな闇の中、脱衣所の非常灯だけが、 (あやしく)しく辺りを照し出していた。 こんな時シーカーが話せたら、 状況を確認できるんだが。 俺はそのまま浴室の扉を開いた。 中は薄暗く人の気配がしない。 非常灯の赤い警戒色が(わず)かに残った湯気に反射して赤いカーテンをかけていた。 そこにはU字型のシャワーブースが2つ残るだけで誰の姿も見えなかった。 「カラス!」 俺は思わず叫んでいた。 狭い室内に反射した声がエコーをかけて返って来ただけだった。 何か恐ろしい事が起こっているという漠然(ばくぜん)とした 不安と恐怖だけが心に広がっていた。 何が起こってるんだ? 幽霊屋敷に取り残され、 裸で震えながら踊らされるピエロの様だった。 「ガッタ!」 その時、奥のブースの影から音が聞こえた。    
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