人格統合のパラドックス

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男はそこは(ゆず)れないと言った風に熱弁した。 「頼む。 色々諸事情(しょじじょう)があってそっちの方がいいんだ」 俺がそこまで言うなら何か事情があるのだろう。 「わかった。 アスカでいいよ」 何もかもがどうでも良かった。 俺はいつからこんなに虚無的(きょむてき)になったんだろう。 イリアのいない世界に意味があるようには、 思えなかった。 カラスが早速(さっそく)、俺をその名で呼んでいた。 「アスカ兄。 アスカ兄が記憶を無くしてから、 もう2日たっているんだぜ」 カラスにそう呼ばれるのは少し寂しい気がした。 「これも混乱を避けるために必要なんだ。 我慢してくれ」 ソウヤは申し訳なさそうにそう言った。 まあそれは2人きりの時に解消すればいいか。 「わかったそれで話しは?」 「イリアの事だ」 ソウヤは真剣な目でそう切り出した。 「イリアを蘇らせる方法が分かった」 それはあまりに衝撃的な告白だった。 もう一人の俺は(あきら)めなかったのだ。 かつてイリアがそうだったように。 イリアを失う事を認めず、そして答えを見つけた。 イリアが言うように前のマスターは誰より彼女を 大切にしてたのだ。 「それはどんな?」 俺はソウヤにそうたずねていた。
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