人格統合のパラドックス

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「それはイリアが完成させた転移装置の事だ。  ここの転移装置は並行世界に飛ぶものだが、  それを少しいじって過去に行く方法がわかった」 それはつまり過去を改変(かいへん)すると言う事か? そんな事をすれば今の自分達の存在(そんざい)自体(じたい)、 消えてしまいかねない。 この未来そのものを無くす事に。 消えてしまうと(わか)ってか? 全員の目を見て気づいた。 本気だと。 まあ今なら、 この未来の1日の記憶がリセットされるだけだが、 それよりもこの方法にはもっと危険な事がある。 「1つ聞く。  俺がそう言うには、タイムパラドックスの  解決方法が見つかったんだろうな?」 「それを答える前に1つ質問させてくれ。  どんな犠牲(ぎせい)を払ってもイリアを助けたいか?」 俺は即答(そくとう)した。 「もちろんだ」 「それは自分の命を犠牲にしてもか?」 「そんなもので良いならいくらでも預けてやる」 だがその前に解決しなければならない問題がある。 そうタイムスリップは、 技術だけの問題で解決できる事柄(ことがら)ではないのだ。 過去を改変(かいへん)すると言う事は、 自分の過去が変わる事だ。 今の自分が存在しなくなる。 つまりは過去を変えに行った自分がいなくなる。 過去を変えに行った事実も無くなるのだ。 過去を変えに行った自分がいなくなれば、 過去は変わらず再び今の自分が過去を変えに行く。 終わる事の無い無限地獄に、ループにはまるのだ。 これを解決しなければ過去に戻るのは、 破滅(はめつ)でしかない。 その事は俺なら良く(わか)っている(はず)だ。 それを()まえた上でソウヤは過去に行く方法が わかったと言っているのだ。 イリアを思う心は、俺の限界(げんかい)()えたらしい。 その間、醜態(しゅうたい)(さら)していた俺とは大違いだ。  
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