人格統合のパラドックス

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「それは大丈夫だ。 (すで)に殺人ウイルス除去(じょきょ)のプログラムは完成している。 それを送ればすぐに完治する。 そして過去に戻れるのは君だけなんだ」 それはどう言うことなのか? 「どうして俺だけなんだ?」 「それは君が特異点(とくいてん)だからだ。 (くわ)しくは解らないが現時点で過去に戻れるのは 君だけだとナビのコンピューターが弾き出した。 自分が存在しなかった平行世界なら、 自由に誰でも過去に行けるらしいが。 今あの時点に戻れるのは特異点の君だけだ。 それともう1つ、ここは君がノワールとはぐれた 元の平行世界だ。 時間を遡るには違う平行世界からでないと渡れないらしい。 装置ごと転移は出来ないからこちら側の転移装置はまだ完成していない。 既にイリアが完成させた設計図があるから、 すぐに完成するはずだ。 どうだこのプランに乗ってくれるか?」 「お前に(まか)せる」 ソウヤは意外そうに俺を見つめていた。 「んっ?どうした」 「いや俺が他人をお前って言うのは珍しいなと 思って・・・ 」 「そうか? まあ自分に気を使っても仕方ないだろう」 「信頼の(あかし)だと受け取っとくよ」 俺が俺に何言ってんだ? 「装置はこっちで完成させるから、 アスカはそれまで休んでいてくれ。 アスカは過去に戻ってからの方が大変だからな。 今は休んでいてくれ」 「そうか、なら遠慮なく休ませてもらう」 散歩でもするか。 それに元の世界に戻って来たなら、 俺にはもう1つだけしないといけない事がある。 ノワールを見つけないと。          ―123―
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