人格統合のパラドックス

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俺が()びをして部屋を出ようとすると ファナが話しかけて来た。 「アスカさん寝癖(ねぐせ)がついてますよ。 ちょっと待って下さいね。 シーカーさんフォログラムミラーをお願いします」 彼女がそう言うと同時に、自爆した(はず)のシーカーが現れた。 「これってこちの世界のシーカーなの?」 「そうですよ。 ここにいたんですよ」 「ここにシーカーがいると言う事は、 こちらの世界のイリアもいるのか?」 期待する表情を読んでファナが続けた。 「すみません。 ですがイリアさんは見つかってないんです」 イリアが違う平行世界に俺を求めた気持ちが 少しわかった。 「こちらの時間軸(じかんじく)ではイリアさんはこちらに (つと)めてないのかも知れません」 それで装置が完成してないのか。 いや仮に勤めていても俺と出会って、 俺が死んでなければイリアは装置をつくらない。 そんな事を考えている間にシーカーが俺の姿を フォログラムで映し出していた。 寝癖のついただらしないソウヤが、 そこには立っていた。 目は赤く()れ上がり、目やににまみれた(ひどい)い姿だ。 「アスカさんはちょっと待ってて下さい。 ()れタオルを持って来ます」 そう言ってファナは駆けて行った。 既に室内はみんな退出していて、 俺は閑散(かんさん)とした室内に1人取り残されていた。 ふとこのまま誰も帰ってこずここで1人取り残され一生を終えるんじゃないかと言う錯覚を覚えた。 その心配はすぐに杞憂(きゆう)に終わった。 ファナがビニール袋に入ったままの おしぼりの乗ったトレーを(たずさ)え帰って来た。 それはファションモールで見た、 自動で動くトレーと同じ物だった。 俺はそのおしぼりを取りビニールを開いた。 その袋を開けた瞬間もうもうと湯気が立ち上ぼり、 冷たいおしぼりが途端に温かくなった。 まったくこの世界の技術にはいつも驚かされ、 いつまでも新鮮(しんせん)さを失わない。
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