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はいすいませんお言葉に甘えます。僕はどっかりと座布団に座って、出されるがままにお菓子を腹に収めた。
「ふう」
「お茶淹れよか」
彼女がちゃぶ台の中央の盆から、茶葉のパックを並べる。緑茶、ほうじ茶、烏龍茶、…?
「これ何なん?」
最後に置かれたのはマスキングテープが貼られただけのジッパーだ。目を凝らすと、今にも消えそうな丸文字で『ルイボス』とある。ルイボス。聞いたことのあったようなないような。鼻を近づけると、よく知った香りがした。奈月の水筒の中身だ。奈月の両親の土産だそうだ。瞬時に脳が奈月の影を追う。
あろう事か、彼女はそれを烏龍茶と半分ずつ急須に入れた。僕にお湯を持って来させた彼女は、急須から溢れるギリギリまで注いだ。たちまち部屋に漂う香りは、謎以外の何者でもない。奈月がよく漏らしていた『変なお茶』の正体だろう。奈月は味覚に鈍感な方だ。彼女が奈月の料理の腕を不器用だと評したのは、単に味付けが違うことを形容したのかもしれない。
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