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「着席ィ。休みはいるか」
担任がガラガラと扉を閉めて、教卓に出席簿を置いた。今日はキリンさんシャツですか、ちょっと違う方にキマってます。
皆頭を下げきらないまま、慌ただしく椅子が動いた。座るなりクラス委員が辺りを見回す。
「稲田」
「え?」
ぽっかりと空いた席へ、一斉に視線が集まる。
「あいつ皆勤だろ、どうして」
小学校以来十一年間も皆勤しているのは、学年でも奈月だけだった。中学の時に転校して来た僕以外のほとんどのメンツは、高校までそのまま持ち上がっている。
「リョウ、知ってるか」
今度は僕の方に注目が集まる。俺のニキビだらけの顔を見ても得にはならないだろ。
「知らんけど」
そういえば昨夜から何も連絡を取っていない。昨日は父親と喧嘩して、スマホを持たずに家を飛び出したんだった。何たる不覚。
「まあ、あとで家に電話すれば済むだろうな」
担任がそう締めて、そのままHR(ホームルーム)は解散になった。しかし、不覚どころではなかったのである。
一限が終わり、廊下に出ると担任に呼び止められた。
「宮下。昨日は稲田と帰ったんだよな?」
「そうですけど」
「今家に電話したんだがな、昨日から家に帰って来ていないらしい」
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