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「…はああああああ??」
声が思ったより大きく出て、教室の中にいた者たちが一斉に静まった。
「何だよ」
廊下にクラスメイトが集まってくる。
「…失踪って言えばええんか」
「稲田がか?」
「おい、どういうことや」
学校帰り、いつもの角でいつものように別れた。それきりだ。父親と喧嘩して夜風に当たりにいった時、スマホを家に忘れたのでラインもしていない。今朝は寝坊して学校まで走ってきたから、やはり連絡は取っていない。
そこまで手短に話して、チャイムが折悪く鳴った。
「奈月が家出するわけないよな」
「話は後だ。とにかく授業受けてこい」
心配なまま、昼までを過ごした。当然、授業も手に付かない。
奈月はどこにいる?
昼休み、また担任に呼び出された。僕も相当浮かない顔をしている自信があるが、担任はそれにも勝るほどの無表情である。
「稲田が家出するわけなんてないと言ったな」
「だって…家出する理由がないから。家出ならまず俺に連絡するだろうし」
「お前が言うなら、ないんだろうな」
「どうも」
なぜここまで信頼が厚いのか分からない。
「家出じゃないとしたら何だと思うか」
「いや…」
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