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三日目の放課後、奈月の家を訪ねた。
「こんにちは」
「ああどうも、どなた?」
奈月の祖母は、以前出迎えられた時よりも認知症が進んでいるようだった。2度目の僕を忘れるくらいはいい方なのか。
「奈月さんの友達の、宮下?一です」
「ああ、ボーイフレンドのリョウくんやな」
「そう…です」
間違いではないが、…いつフレンドにボーイの認識がくっついた?
「上がりぃ」
居間で出されたお茶は至って正常だった。よく変なお茶が出てくるの、と奈月が漏らしていたが一安心である。
「奈月さんのことなんですけど」
「ああ、今学校に行っとるんやろう。もうちっとで帰ってくるから待っとき」
「いや、あの…」
彼女はよたよたと壁を伝いながら台所に行ってしまった。またこちらに戻らせると時間がかかって厄介だ。僕も台所に行くと、ゴミ袋から飛び出した食べ残しやゴミが、足の踏み場をなくしていた。カップラーメンの容器、冷凍食品の袋、洗えばまた使えるであろうタッパー。奈月が総菜をストックした物だと思われた。
「ご飯はおばあちゃんが作っとんのですか?」
「そうや。奈月は不器用やさかいな」
いや、料理は奈月が作ってるはずじゃ…?
以前、『祖母が大阪育ちだから味付けが違うってうるさいの』なんて言っていたじゃないか。どちらが本当か分からない。
「その辺にたまってるゴミ、捨てときましょか?」
「そんなことはええ。何やお菓子食べて待っとき」
いや、奈月は…。この事実を伝えたらどうなるんだろう。
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