2、強くなりたい

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 新次郎が立ち去ろうとしたとき、 「待て」  ホイットニーは新次郎を呼び止めた。そして再び口を開く。 「料金が……」  とホイットニー言ったその刹那、セーファスがとっさにその口を右手で塞いだ。 「大長老。ちょっとは考えてください。あんなボロボロの子からお金をむしり取るつもりですか?」  ホイットニーがじたばたともがく中で、セーファスはホイットニーの耳元でそうささやいた。 「ごめんなさいね。新次郎さん。お代は今日は結構なんですけど、こちらにサインをお願いできますかね?それと、お父さんがお母さんのサインがここに欲しいんですよ。契約書です。あ、今回新次郎さんやおうちの方からはお金は貰いませんからね。そのことも書いてありますよ」  セーファスはそうにこやかな顔で言うと、ボールペンを新次郎に差し出した。新次郎はボールペンを走らせ、署名を終わらせた。 「ではこちら、おうちの方に見せてくださいね」  セーファスはそう言って新次郎に契約書を渡した。新次郎はそれをボロボロの鞄にしまうと、とぼとぼと転職相談所をあとにした。 「大丈夫ですかね?あの子……」 「大丈夫じゃわい。ワシのスペシャルメニューじゃからの」  ホイットニーはそう言うとそそくさと給湯室へと戻り、テレビのスイッチをつける。テレビには十手を持った岡っ引きが映し出された。岡っ引きは逃げる悪者に寛永通宝と書かれた銅銭を投げつけ、見事悪者を召し捕った。 「やっぱりええのォ。時代劇は」 ホイットニーがそう笑いながら言う中で、セーファスは静かにため息をついた。
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