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セーファスはテーブルの上にあるリモコンを取り出し、ムッとした表情で電源を切った。
「何じゃ!?良いところじゃったのに……」
「ちゃんと話聞いてるんですか?まったく。こんなんだから龍の星にいつまで経っても帰れないんですよ!分かってます?」
セーファスは尖った口調でホイットニーをそうたしなめる。
「別にいいじゃろ?それに、地球も良いところではないか。地球にこんなに面白いものがあるとは思わなかったわい。ほれ」
ホイットニーはセーファスから再びリモコンを奪い取り電源をつけると、屈強な男が葵の紋の入った印籠を右手で突き出していた。
「全く。お主が電源を勝手に切るから、チャンバラの場面を見逃してしまったではないか」
ホイットニーはあからさまに不機嫌な様子でセーファスにそう言うと、セーファスの目がつり上がった。
「お言葉ですけど、このテレビ、大長老がうちの売り上げをちょろまかして買ったってこと、私が知らないとでもお思いですか?」
セーファスの問いかけに対してホイットニーは押し黙ってしまった。ホイットニーの目が泳いでいる中、テレビには嫌疑をかけられた代官が正座をしたまま少しだけ身をかがめ、
「恐れながら、私には全く身に覚えのないことでございます」
と、とぼけた表情で弁明している映像が流れている。
「な、何のことかのう?」
「とぼけてもすべてお見通しですよ。それに大長老。あなた勝手に時代劇チャンネルまで契約したでしょう!この契約書、身に覚えがないとは言わせませんよ!」
とぼけるホイットニーに対してセーファスがそう言って契約書をつきつけた瞬間、テレビでは縄に縛られた男3人をクノイチが引き連れてくる様子が映し出された。代官は
「ははぁ~恐れ入りました」
と言って深々と頭を下げると、役人に引っ立てられていった。
「全く。もうちょっと考えてください。うちの転職相談所はそこまで裕福じゃないんですからね」
セーファスが呆れた表情で言うと、
「う、ウム……」
ホイットニーはそう答えるしかなかった。
「それに、あのシーンはチャンバラとは言いません。殺陣って言うんですよ。もう2年も居るんですからそろそろ日本語をしっかり覚えてくださいね」
セーファスの指摘でとどめを刺されてホイットニーが完全にしょげているところで、正面のドアが開いた。
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