第1話 宇宙を仰ぐ

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第1話 宇宙を仰ぐ

「宇宙を仰げ!!」 静まり返った体育館内に1人の男の叫びが響く。 初春のある晴れた日の昼下がりのこと。青央高等学校の第1体育館では新入生に向けて部活動紹介が行われていた。 今年度の新入生である自分も席につき、各部活動の紹介を聞いていた。だが、どの部も部員数や顧問、活動内容に意気込みなど、ありきたりで似通った事ばかり話し、正直なところ退屈だった。 早く終わらないかと思っていたところ、部活動紹介が終わり、続いて同好会の紹介が始まった。 その時だった。彼が現れたのは。 「ようこそ新入生の諸君!俺は宇宙研究会会長の藤原大輝だ!」 自分の席から壇上までは多少距離があり、はっきりとは見えないが、短めの黒髪に、眼鏡が特徴的な男子生徒だ。 彼は館内全体に響き渡る大声で、生き生きと宇宙研究会の紹介をした。 その様子を見るだけで分かる。宇宙研究会は、彼の”居場所“なんだろう。 自分には無いものが彼にはある。 ここで羨ましいと思うのは筋違いだろうか。 それでも羨ましいという気持ちがふつふつと湧き上がる自分がいた。 カーテンの閉められた暗がりの館内で、目の前の壇上が眩しく思えた。     
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