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「メグさん、メグさん」
野暮ったい太縁の眼鏡をかけた細身のその男は、私の名前を呼んで抱き上げた。
私はレディよ。子ども扱いは気に入らないわ。
私が預けられたのは、センタローというママの弟のところだった。
「おいメグ! そこどけよっ」
「言われるまでもないわよ」
スルリとセンタローの腕をすり抜け、私は床に足をつける。そして代わりにセンタローに飛びついたタツを睨みつけた。
「貰われっこのくせに、生意気だ」
「うっさいわね、甘ったれのパパっ子。貰われてないわよ。ちょっと預けられただけ」
「現実見ろよバーカ」
タツはセンタローの家の子。真ん中で分けられた黒い前髪が、ちょっとカッコつけで嫌な感じ。
現実ってなによ。私がママたちに捨てられたっていうの?
そんなわけないわ。だって、私が家を出る時に、パパもママも泣いていたもの。
泣かなかったのはーー寝ていたあの子だけ。
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