しろくてやわらか

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家の外なんて、一人で歩いたことなんてない。 すれ違う人たちは無関心だったり、私のことを見て微笑んだり、「どうしたの?」なんて聞いてくるけど、私はなにも答えないでひたすらに道を進んだ。 見たことない壁、邪魔くさいゴミ箱、遠慮なくすぐそばを走って行く車。 ねえ、ここはどこ? 私の家は、どこにあるの? 同じ帽子に揃いのカバンを背負った子どもの群れが、高い声で騒ぎながらすれ違っていく。 何人か私を見て「おいで」と言ったけど、私は走って逃げた。 少し寒くなってきた。 お腹も空いて、歩き通しの体は重たくなる。 日が沈んで辺りは暗くなってきた。 人の通りも少なくなりーーついに私は、赤と黒の世界に一人ぽっちになった。 私はないた。 家を追い出された時みたいに、大きな声でないた。 何で私を捨てたの? 私が悪いことしたから? ねえ、嫌いになっちゃったの? (お願い、誰か、私を迎えにきて。)
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