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「メグさん、いたっ!」
道端にうずくまった私を抱き上げたのは、センタローだった。
「何でアンタなのよ」
私はセンタローの胸を叩きながら言った。
センタローは、汗の匂いがした。
「アンタじゃないの。私のお家は、アンタのとこなんかじゃない!」
それでもセンタローは、優しく私の背中を撫で続ける。
「……バッカじゃないの……」
私はなくのも疲れて、センタローの腕の中で丸まった。
「あのね、メグさん。ゴメンね。やっぱり僕のところじゃ寂しいかい?」
私は丸まったまま黙りこむ。
「でも姉さんの赤ちゃんが、猫アレルギーなんだってさ。みんなメグさんのことが本当は好きなんだ。でも、病気じゃ仕方ないだろ?」
センタローの言ってることはよくわからないけど、彼が悪い人じゃないってことだけは、この数日で十分に分かってる。
「ねぇ、お腹空いたんだけど」
小声で呟けば、
「じゃ、うちに帰ろうか」
なんて、野暮ったい眼鏡の奥で優しい笑顔がかえってきた。
「メグさんは真っ白で、ふわふわで、わたあめみたいだね。ははっ」
私はセンタローの肩越しに、街を見回す。
どこも、私の場所じゃない場所。
「タツも嫉妬しちゃってさ。でも、そのうち慣れたら仲良くなるからさ」
ホントに、ホントにそうかしら。
慣れたら、私の場所になるかしら。
私はあったかいセンタローの胸の中でぎゅっと小さく丸まる。
そして少しだけ、しばらくないたの。
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