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授業がはじまってしばらくして、「やべ、資料集忘れた」と井原が小さく言った。
「ごめん、見せて」
机をくっつけて二人で資料集をのぞき込んでいると、昼休憩にサッカーでもしていたのか、少し汗っぽい匂いがした。でも全然不快じゃなくて、男の子っぽいなと思う。
ふとまた、自分の匂いが気になり出した。
香水の、花みたいな香りは私からはしていない。それを井原はどう思うだろう。がっかりされるかもと体を出来るだけ離したくなった。
動いたはずみで、消しゴムが井原との間に落ちてしまって、焦ってかがむ。
消しゴムを拾い姿勢を戻したときに、「すっ」と井原が少し息を吸った音が聞こえた。
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