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 学習塾。少年は機械人形師に言われたことを考える。兄を誘い出すことは簡単だ。以前の関係であれば。今の微妙な距離感では難しいし、少年から話しかける勇気がない。そんなことを考えている為、授業の内容が頭に入ってこない。塾からの帰り道、少年は偶然、知らない女の人と一緒にいる兄を見かけてしまう。傷つく心、改めて兄のことが好きになってしまったと確信する。少年の知らない表情の兄、兄には大切な女の人がいることを知る。少年は自分の気持ちを押し込めようと決心する。  人形屋二人の会話。 「色んな愛情があるんだね。人間は複雑で、だからこそ面白い」  机の上には二人の写真が置かれている。  兄は背も高く、活気溢れる男らしい人間。クラスの中心にいるような人間で、周りからの信頼も厚い。一方、弟の方は小柄で見た目のせいもあるが、非常に弱弱しい。引っ込み思案でクラスの陰にいるような人間だ。売人は対照的な兄弟にしか見えない、共通点が見当たらないという。機械人形師はその言葉を否定する。二人とも、互いのことを語るときの瞳が同じだと。  意思の強そうな、透き通ったビー玉みたいな黒い瞳が同じだと。
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