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 放課後の図書室。夏の模試が近づいている。少年のほかにも図書室で自習している生徒がちらほら散見される。少年の携帯電話に一通の連絡。女生徒から今すぐ駅前に来いとのメール。無視をしていると図書室に女生徒が現れ、半ば強引に連れ出される。  これが本当に最後になるからと言う女生徒の後を渋々ついていく。女生徒が足を止めたのは、人形屋の事務所とは別の建物で、看板には「BAR アンスリウム」の文字。階段は地下へと続いている。少年が躊躇っていると、女生徒に背中を押される。「入ればわかるから」と。階段を下り、店の扉を開ける。からん、と乾いたベルの音がする。少年の背後で扉が閉まり、女生徒の姿はなかった。  薄暗い店内。入ってすぐにバーカウンターがあった。その中にいる店員が、奥の席へと示す。恐る恐る少年が足を踏み出すと、奥の二人掛けのテーブル席に兄の姿があった。何故、という疑問符が浮かびながらも歩を進めると、兄がこちらに気づく。その表情は酷く驚いた顔だ。少年は人形屋が仕組んだものだと気づき、軽い怒りを覚えて周囲を見回す。女生徒の姿はもちろん、人形屋の姿は見当たらなかった。仕方なく席に着く。     
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