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 次の日の朝。少年は寝ぼけ頭であれは夢であったのではないかと疑う。居間で兄と顔を合わせる。兄は昨晩のことなど何もなかったかのような態度。でもそれは少年には感情を抑えているようにみえる。(物語前半の暗い気持ちから一転、明るい描写。恋する乙女。)  昼過ぎに登校した女生徒と話す。まず、ありがとうと感謝をつたえ、帰りに人形屋に寄って話をしようと思っていることを伝える。女生徒も一緒に行くという。  午前中の晴天が嘘のような大雨。これから起こる不穏な感じを出す。一方、少年の心は晴れやか。  人形屋。事務所には売人の姿はなく、機械人形師だけがいた。少年は兄に自分の思いを伝えたことを話す。兄も同じ気持ちであったことを知り、悩んでいたものが軽くなったと話し、機械人形を作る必要はないという。その言葉を聞き、機械人形師は半ば怒りのような感情で少年を責め立てる。  心が繋がっているからそれでよいなんてきれいごとは少女漫画の中だけであると。兄が知らない女とキスをし、熱い抱擁を交わしている姿を想像してみろ。その知らない女と結婚したら? 幸せそうに微笑む二人の間に少年が入り込む隙間なぞどこにもないぞ、と。  困惑する少年。それでも恐れずに自分の思いを伝える。  兄とはずっと一緒にいることはできないのだと。そういう感情が二人の間にあったという事実を封印してこの先、生きていくことに変わりはない。この兄に対する愛情は兄に認めてもらえることで矛先が収まった、とても晴れやかな気持ちだと。  機械人形師は、本人がそういうなら仕方がない、とそれ以上いうことはなかった。
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