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 中学最高学年に上がって新学期が始まり半月、そろそろ生徒たちの興奮も収まって来た頃、主人公の少年は隣の女生徒から話しかけられる。その女生徒は少年と同じく学年の中では〝変わった子〟として浮いた存在であったため、少年も顔と名前は知っていた。彼女は他の女生徒のように群れて、キンキンと頭に響く姦しい声で騒ぐことをせず、常に一人でいる。学校に馴染めないのか、休みがちであった。  その女生徒が少年に、自分が休んだ分の授業のノートを写させて欲しい、という。少年は特に断る理由がなかったため、それを了承する。それから幾度か女生徒とそんなやり取りをする内に何気ないことも話すようになる。  ある時、女生徒が少年の右腕(または右手)に傷があるのに気づき、それはどうしたのかと尋ねる。少年は少し恥ずかしそうに、兄とお揃いの傷であると言う。女生徒はその返しと少年の傷を眺める眼差しに違和感を覚える。(実は、少年は幼い頃に兄に怪我を負わせてしまい、それから同じ位置に自傷行為をする癖がある)  ふとしたことから、少年は家で兄にその女生徒のことを話す。しかし、兄の態度は素っ気ないもので、いつもの兄ならば我が事のように喜んでくれると思っていた少年は面を食らう。そこで少年は、兄の就職先が決まったことを聞く。兄の朗報を少年は祝福するが、依然暗い表情のままの兄。不審に思った少年は理由を聞く。兄の就職先は家から通える距離ではなく、家を出る必要があるという。その事実を突きつけられ、少年はこれまで心の支えにしてきたものが無くなることの恐怖を知る。
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