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 その狭い一室には二人の若い男がいた。雰囲気は少年が通っている学習塾の受付が一番近い。その男たちは少年の兄よりは歳が上に見えたが、女生徒は知り合いなのか、親しげにしている。こんな生き生きと話す女生徒を少年は教室で見たことがなかった。  女生徒と謎の男二人組に少年は質問攻めにあう。少年の生い立ち、性格や過去のトラウマ、特に兄に対する感情について、初対面だというのに不躾だ。兄には尊敬と憧れを抱いている、と話すそばで少年は、兄弟の愛を超えた感情ではないかと疑いを抱くようになる。  兄のように立派な人間になりたいのかと問われれば違う。兄のそばにずっと一緒に居たい、手をつなぎたい、抱きしめられたい――。少年は自分の奥底に隠された感情に気づいてしまう。体の芯が熱くなる。兄と一つになりたいと。  男たちの追及がひと段落すると、彼らは自らの仕事について話し出す。  彼らは〝人形屋〟だという。人間の代わりとなるような機械人形を作ることが仕事だという。少年が半信半疑でいると、奥の部屋から機械人形だという女生徒そっくりの機械人形が出てくる。見た目は変わらないし、普通に会話もできる。人間と異なる点は、機械人形には体温がないことと、飲食が出来ないことだと言う。     
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