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「……なんで、私が悩んでいるって分かったんですか?」
「ん?そんなの簡単だよ。いつも見ているからな。君の変化くらいわかるさ。特にここ数日は表情がどこか暗かったぞ?」
当たり前のことのように言いながら私の顔を覗き込む先生。
先生が自分を見てくれていた嬉しさと恥ずかしさが同時にこみ上げてきて、私は思わず顔をそらす。
そんな私に先生はまた笑顔を向けてくれた。
この人になら話してもいい、と思えた私は先生に自分の思いを聞いてもらった。
周りに比べて自分が地味な自覚があること、自分を変えるべきだと思うが、勇気が出ないこと。
一通り話し終えると先生は真剣な表情で私の悩みに答えてくれた。
「だいたい分かった。だが、君は自分が変わるべき、と言ったな。それは、周囲の環境から君がそう考えただけで君の本心ではないのだろう。それに私は無理して変わる必要はないと思うぞ?」
「そうでしょうか……」
「ああ、君は自分が地味だと言ったが、そんなことはない。周りに比べて落ち着いているだけだ。それは君の個性だよ。それに、気配りができて、周りにも優しく接することが出来る。だから、君はクラスメイトからも認められているんだ」
自分がクラスから認められているなんて考えたこともなかった私は、先生が気を遣ってくれているのだと思った。
「ありがとうございます。そう言っていただけると励みになります」
「む、私が気を遣ってこんなことを言っていると思っているな?そうじゃないぞ。その証拠に君はクラスメイトと仲良くできているじゃないか。あの子たちは素直でいい子ではあるが、自分に正直すぎるところがあるからな。言い方は悪いが君が本当にただ真面目なだけの地味な子だったら仲良くできないどころか、いじめの対象になっていてもおかしくない」
先生は私に目を合わせて静かに言った。さっきの笑顔との温度差が激しい。でも、その分先生が真剣に言ってくれているということが伝わってきた。
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