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委員長は何を驚いているのか、わからないという様な不思議そうな顔をし、煙をふうっと吐きだした。私はまだ混乱している。
「まあ、座りなさい」
「ハイ」
思わず反射的に乾いた返事をした。命令されたわけではないのだけれども、私は委員長の言葉に無意識に従った。
「この場所を知っているのは、私だけかと思った」
「私も」
委員長はいつもの人当たりの良い笑みではなく、いたずらっぽく、ふふっと笑った。その笑みは不意打ちで、私はどぎまぎしてしまい、視線を泳がせた。
「委員長はたまに保健室に行くけど、もしかしたらサボっていたの?」
「北方」
「はい?」
「私の名前は委員長じゃなくて、北方小夜子だよ」
「はあ」
狐につままれる、ということはこういう事を言うのだろうか。私はぽかんと間抜けな顔をしているだろう。それがおかしいのか委員長、もとい北方小夜子は声を出して笑った。
「阿部さんって正直で可愛らしいひとね」
「……なんかそれ褒められている気がしないんですけど」
「褒めているよ。きっとそれが阿部さんの美徳」
北方はそう言って携帯灰皿を取り出し、煙草を消した。そんな北方は、教室で見る大人びた姿ではなく、無邪気な少年のようだ。
「身体に悪いよ。しかも未成年だし」
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