散る散る満ちる、満ちる散る

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 歩を進めるごとに地面はさくさくと音を立てる。いつもの桜の木は落葉し、足元には赤い絨毯のように枯葉だけが残っている。  小夜子の様子が少しおかしいと気がついたのは、私だけのはずだ。彼女は取り繕うことが何よりも上手かったから、誰にも知られないと高を括っている。私は教室での小夜子の一挙手一投足を見つめてきた。だから私は驚いた。教科書をめくる小夜子の手が震えていたことに。 「北方さん? どうかされたの?」 「ちょっと目眩がして。保健室に行くわ」  労わりの言葉や付き添いを断って、小夜子はひとりで教室を出た。そして一時間が経っても戻って来ない。私はいつもの木の下へ向かった。  歩くたびにさくさくと音を立てる枯葉の音は、乾いていて寒々しいものだ。目印の桜が見えると、私はゆっくりと足を進めた。 「小夜子、何があったの?」  幹にもたれ、煙草を吸っている小夜子は、目線だけ私に向けた。 「別に」 「そういうわけじゃないでしょ」  小夜子は紫煙を吐くと、彼女は足元から崩れ落ちる。 「いったい、どうしちゃったのよ?」  私は彼女の腕を掴んだが、小夜子は力なくその場に座り込んだままだった。 「……こん」 「こん?」 「結婚するんだって」     
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